目次
産業廃棄物の収集や運搬では、トラックが欠かせません。
現場で発生する廃棄物の種類や量、運搬距離、搬入先の条件によって、選ぶべき車両は変わります。
また、産業廃棄物を運ぶ車両には、構造や表示に関する法令上の基準があります。
基準を満たさない車両を使うと、産業廃棄物収集運搬業許可の取得や更新ができないこともあるため注意が必要です。
この記事では、産業廃棄物の運搬に使われる主なトラックの種類と特徴、導入や管理のポイントをわかりやすく紹介します。
産業廃棄物の運搬におけるトラック
産業廃棄物の収集運搬業務では、トラックが作業の中心を担います。
廃棄物の種類や量、現場条件に応じた車両の選定は、作業効率と安全性に直結します。
また、法令で定められた構造基準や表示義務を満たさないと、許可の取得や更新ができず、事業継続にも支障をきたします。
この章では、産業廃棄物の運搬に使用されるトラックの役割や導入・管理のポイントを解説します。
トラックの種類
産業廃棄物の収集運搬に使われるトラックには、用途や積載物の性質に応じたさまざまな種類が存在します。
構造や機能は車両ごとに異なるため、現場や廃棄物に応じた適切な車両を選ぶことが求められます。
車両の選定には法令で定められた基準を満たすことが前提です。
積載量や価格だけで判断すると、許可取得や運用面で支障をきたす可能性があります。
業務の安全性や効率を高めるには、車種ごとの特徴を理解し、目的に合った車両を導入することが欠かせません。
以下では、代表的なトラックの種類とその役割について説明します。
ダンプ車
建設現場などで発生するがれき類や汚泥など、比較的乾いた固形物の運搬に適しています。
特に、解体工事や造成工事などで発生する廃材の搬出においては、ダンプ車の機動性と積載力が重宝されます。
荷台を傾けて容易に荷下ろしができる構造で、作業効率を高め時間短縮にもつながります。
ただし、飛散や流出を防ぐため、シート掛けや密閉構造の確保が必要です。
アームロール車
脱着可能なコンテナを積載するタイプのトラックです。
廃棄物が一定量たまった時点でコンテナを交換できるため、作業効率の向上につながります。
複数の現場を効率的に回れる点も大きなメリットとです。
特に、定期的な廃棄物回収が必要な施設や、短期間で大量の廃棄物が発生する現場では、アームロール車の導入が業務の最適化につながります。
パッカー車
いわゆる「ごみ収集車」としても知られており、可燃ごみや紙くずなどの軽量な廃棄物を圧縮しながら収集・運搬する車両です。
積載効率が高く、狭い路地や交通量の多い地域でもスムーズに作業できるため、都市部での回収業務にも適しています。
産業廃棄物の収集運搬に使用する場合は、許可内容や積載物の種類に注意が必要です。
バキューム車
液状の産業廃棄物や汚泥などを吸引・密閉して運搬するための専用車両です。
密閉構造により、悪臭や液漏れを防ぐことができ、衛生面でも優れた性能を発揮します。
主に浄化槽の汚泥や排水処理施設からの廃液の運搬に利用されます。
吸引力やタンク容量は車両ごとに異なるため、処理対象の廃液量や粘度に応じた車種選定が必要です。
さらに、衛生面や機能面のトラブルを防ぐためには、定期的な洗浄と点検の実施が欠かせません。
タンクローリー車
液体状の産業廃棄物を大量に運搬するために設計されている車両です。
廃油や化学薬品などの危険物に対応でき、車体は耐腐食性や耐圧性に優れています。
密閉性の高いタンクが搭載されており、漏洩や揮発を防ぎます。
また、運搬先の施設に直接注入できる構造で、作業効率にも優れています。
危険物を扱う場合は、消防法や労働安全衛生法などの関連法令に基づいた運用が求められます。
運転者には危険物取扱者の資格が必要となるケースもあるため、法令遵守と人材確保の両面で準備が必要です。
チップ車
木くずや剪定枝などの軽量かつかさばる廃棄物を効率よく運搬できます。
荷台が大容量のため、かさのある廃棄物も一度に多く積載可能です。
特に製材所や解体現場などでの利用が多く、木材系の廃棄物処理に適しています。
飛散防止のためには、荷台の囲いやシート掛けなどの対策が必要です。
また、木材系廃棄物は再資源化の対象となることも多く、チップ車による効率的な収集がリサイクル率の向上にもつながります。
クレーン車
重量物や大型の廃棄物を吊り上げて積み込むための装置を備えたトラックです。
人力では難しい廃材の積み込み作業を効率化できるため、解体現場や大型機器の撤去作業などで重宝されています。
また、積載物の形状や重量に応じて柔軟に対応できる点も大きな利点です。
操作には一定の技術と安全管理が求められるため、運転者の資格や経験も重要です。
労働災害防止の観点からも、定期的な教育と訓練が必要です。
コンテナ車
アームロール車と同様にコンテナを積載して運搬するタイプの車両ですが、より大型のコンテナを扱えます。
一度に多量の廃棄物を運べるため、処理施設との往復回数を減らすことができ、コスト削減にもつながります。
また、コンテナの種類によっては密閉性が高く、悪臭や飛散のリスクを抑えることも可能です。
現場での積み替え作業が少なく済むため、作業時間が短縮できます。
導入にあたっては、コンテナのサイズや構造が許可基準を満たしているかどうかを確認する必要があります。
特に、廃棄物の種類によっては専用コンテナが必要となる場合もあるため、事前に仕様を確認し、行政へ相談しておくことが重要です。
課される2種類の義務
産業廃棄物の収集運搬は、法令に基づく厳格なルールのもとで行われます。
特に、使用するトラックには一定の義務が課されており、これを怠ると行政処分の対象になることもあります。
産業廃棄物の収集運搬業務は、環境保全や地域社会への配慮のもとで行うことが求められます。
そのため、車両の管理や運行体制にも細かな規定が設けられています。
ここでは、産業廃棄物を運ぶトラックに課される主な義務を説明します。
車両表示義務
産廃の運搬に使用するトラックの車体には「産業廃棄物収集運搬車」と表示し、許可番号や事業者名を明示しなくてはなりません。
表示内容には文字の大きさや色、配置など細かい規定があります。
基準を満たしていない場合は、行政から是正を求められることがあります。
特に中古車を導入する際は、既存の表示が適切かどうかを確認し、必要に応じて修正することが求められます。
書類携帯義務
産業廃棄物の収集運搬を行う際は、トラックに関係書類を常備しておく必要があります。
主な書類には、許可証の写し、委託契約書、マニフェスト(電子または紙)などが含まれます。
行政による立入検査時などに提示を求められることがあります。
不携帯や記載ミスがあると業務停止や許可取消の対象となるため、日頃から管理を徹底することが重要です。
現場ごとに必要書類が異なる場合もあるため、事前の確認が必須です。
産廃トラックの導入と管理
産業廃棄物の収集運搬業務を始めるにあたり、トラックの導入と管理は重要です。
どの車両を選ぶかによって、業務の効率や安全性、維持コストに大きな違いが生まれます。
また、廃棄物の性質や運搬距離、処理施設との関係などを踏まえて適切な車種を選定する必要があります。
日常点検、清掃、記録整備は、トラブル防止と許可維持に不可欠です。
この章では、産廃トラックを導入・運用する際に押さえておきたい基本的な考え方を解説します。
中古で購入するケースもある
産業廃棄物の収集運搬に使うトラックは、新車に限らず中古車を選ぶケースも多く見られます。
事業の立ち上げ時や車両の入れ替えを検討する際、コストを抑え必要な機能を備えた車両を導入できる点が中古車の大きなメリットです。
特に、許可取得に必要な構造基準を満たしている車両であれば業務への導入に支障はありません。
中古車は価格が比較的安く納車までの期間も短いため、早期に業務を始めたい事業者にとって有力な選択肢です。
ただし、表示義務や構造要件への適合状況は事前に確認しておくことが重要です。
導入後に修正が必要なケースもあるため、購入前に点検し、専門家に相談すると安心です。
適切な選定と管理を行えば、長期的な運用にも十分対応できます。
高額で買取も可能
産業廃棄物の収集運搬に使われる車両は、専門性が高く、トラック買取の需要があります。
状態が良く構造基準を満たした車両は、中古市場で高値がつく傾向があります。
特に、許可取得に必要な仕様を備えた車両は、買い手が見つかりやすい傾向にあります。
査定では、年式や走行距離だけでなく、表示義務への対応状況や整備履歴も評価の対象です。
日頃から丁寧に管理しておくことで、売却時の価値を維持しやすくなります。
また、事業の縮小や車両の入れ替えを検討する際には、専門業者に相談することで適正な価格での売却につながる可能性があります。
収集運搬車両は、使用後も大きな資産として再活用が可能です。
計画的な運用と管理が、事業全体のコストバランスにも良い影響を与えます。