目次
産業廃棄物処理法と自動車リサイクル法は密接に関係しています。
それぞれがどのように関わり、どちらの法律が適用されるのかについて見ていきましょう。
産業廃棄物処理法と自動車リサイクル法の関係
廃トラックや廃車を扱う際に関係する主要な法律として「産業廃棄物処理法」と「自動車リサイクル法」の関係について解説します。
「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(産業廃棄物処理法)」(以下、産廃法)と自動車リサイクル法(以下、リサイクル法)はそれぞれ目的と適用範囲が異なります。
どちらの法律が適用されるかによって、手続きやコスト、対応先が大きく異なります。
最終判断は法文・政令・省令および行政運用に基づくため、個別事案ごとの確認が必要です。
それぞれの法律の目的は下記のとおりです。
産廃法 | 事業活動で発生する廃棄物全般を対象とし、排出事業者の処理責任や適正処理を定めている法律 |
---|---|
リサイクル法 | リサイクル法は使用済自動車の部品を適正に回収し再資源化することを主目的とした法律 |
リサイクル法では引取業者や解体業者の登録制度に加え、再資源化に必要な費用を確保するためのリサイクル料金(預託金)制度等が定められています。
同じ車両の廃棄でも車両の状態や処理方法、最終的な処分先によって適用される法律が変わります。
まず、処分する車両がリサイクル法の対象か、産廃として処理すべきかを判断し、必要な手続きを明確にすることが重要です。
判断は個別の事実関係と法令解釈に基づくため、不明な点がある場合は主管庁や都道府県の窓口へ確認します。
産業廃棄物処理法
産廃法は、高度経済成長と都市化で急増したごみと不法投棄を背景に整備された法律です。
戦後の復興期には、生活廃棄物や工業廃棄物の増加により、河川や海への投棄や野焼きが社会問題化しました。
適正な処理と公衆衛生の確保が急務となったことが、法成立の大きな契機となりました。
その後、経済発展に伴う廃棄物の量・種類の多様化も進みました。
1970年代になると、産業廃棄物の定義や処理責任、最終処分場の基準などを強化する法改正が行われました。
これにより、排出事業者の責任明確化、処理業者の許可制度、マニフェスト等の追跡管理が導入され、不適正処理の抑制と資源循環が定着しました。
主幹は環境省
産廃法の主管は主に環境省です。
環境省が法の基本方針や指針、全国的なルールづくりを行い、法改正やガイドラインの公表を担います。
産廃処理業の許可発行、マニフェストの監督、不適正処理への指導・立入検査などは都道府県が行います。
さらに市町村は不法投棄対応や市民への啓発を担い、業界団体や民間の処理事業者が現場レベルで実務を行う構造となっています。
リサイクル法
リサイクル法は2002年に制定され、2005年に施行されました。
高度経済成長以降、国内で大量に発生する中古車から鉄やアルミなど有価部品を効率よく回収する必要性が高まりました。
ところが再資源化後に残るシュレッダーダスト(ASR)の処理場不足や、廃車の不法投棄・不適正処理が社会問題となりました。
さらに処理コストの高騰に加え、フロン類やエアバッグなどの有害物質を適切に処理することも求められました。
その結果として、メーカーや引取業者の役割を明確にし、資源循環と環境保全を両立させる目的で自動車リサイクル法は成立しました。
主管は経済産業省と環境省が中心
リサイクル法の中心的な主管は経済産業省と環境省で、制度の周知や運用に関する案内をしています。
実務的な支援や登録情報の管理等は公益財団法人自動車リサイクル促進センター(JARC)等が担っています。
また、引取や解体の許認可や現場対応に関しては都道府県・市区町村などの地方自治体も関与し、各地での登録・届出や監督を行っています。
法に関する詳細な手続きや最新の運用指針は経済産業省・環境省の公表資料やJARCの案内、さらに管轄自治体へ確認するのが確実です。
産廃法とリサイクル法の適用
廃トラックや廃車では、産廃法とリサイクル法の適用に悩む場面もしばしば発生します。
例えば、大きく改造されて再資源化が現実的でない場合は産廃法の適用となる可能性があります。
事故で大破・焼損して主要部品が回収できない場合や、油や有害物質で著しく汚染されている場合も、産廃扱いになる場合があります。
一方で、リサイクル法の対象車両であり、外見が傷んでいてもエンジンや部品が回収可能ならリサイクル法の手続きで処理できる場合もあります。
このリサイクル法の対象車両とは、「使用済自動車」を基本としています。
乗用車や小型・大型の商用車、トラック、バスなど四輪車が中心です。
ただし二輪車や小型特殊車両、けん引車(トレーラー)などは適用外または別扱いとなることがあり、詳細は法令・省令で確認が必要です。
どちらの法律が適用されるかは、処理の目的や車両の状態だけで決まるわけではありません。
法律の文言や政令・省令、行政の運用、個別の事実関係などによって総合的に判断されます。
再資源化が主目的か廃棄や有害物質処理が主か、部品の回収可能性や汚染・改造の程度などの実態を確認し、該当する法規を照らし合わせて判断しなくてはなりません。
地域独自の運用(いわゆるローカルルール)がある場合もあるため、最終的な確認は必ず主管庁に行いましょう。
廃車・廃トラックの処理事例を解説
個別に廃車・廃トラック処理方法を説明します。
廃トラック処理は以下の順序で進めるのが一般的です。
- 所有権・名義の確認(車検証、委任状等)
- リサイクル料金(預託金)の有無確認(車検証の登録情報等)
- フロン類・バッテリー等有害物質の有無と適正な前処理(エアバッグ処理含む)
- アスベスト混入の確認(旧車等)・油脂類の抜取り
- 処理業者の許可・登録確認(産廃処理業の許可、リサイクル法に基づく登録の有無)
- 輸出時の規制・証明書類の準備
とくに解体の際には、油脂類やアスベスト混入の有無を確認し、適正な保管場所で短期保管を行うことが重要です。
また、処理業者が産廃処理の許可やリサイクル法の登録を持っているかも必ず確認しましょう。
書類不備や無許可処理は、罰則や行政指導の対象となるおそれがあります。
必要書類や手続きの詳細は都道府県や輸出先国の規制によって異なるため、事前に確認しておくことが大切です。
廃車の処理では、リサイクル法に基づく引取・解体・再資源化の流れが基本です。
まず所有者は引取業者に車両を引き渡し、引取業者は該当する部品の回収や適切な解体を行います。
再資源化にかかる費用は原則として再資源化預託金(リサイクル料金)で賄われています。
リサイクル料金の有無や金額は車両の登録情報や車検証等で確認できる場合がありますが、不明な点は引取業者やJARC等で確認してください。
また、預託金の返還には、再資源化の実績報告や所定の証明書類の提出が求められます。
預託金の額の算定方法および返還要件は車種区分や適用時期により異なります。
具体的事例に関しては、事前確認を必ず行いましょう。
加えて、引取先や解体先が法令登録を済ませているかを確認することも重要です。
未登録業者に依頼すると法的リスクが生じるため注意が必要です。
手続きや返還申請には、期限や様式が定められているため、事前に確認しておくと安心です。
返還申請に必要な書類や期限は制度改正で変わるため、最新の省庁案内やJARCの公式案内を確認してください。